「イギリス人は自国の気候は世界一だと自慢している」(明治時代の西洋案内書:西滸生『実地遊覧西洋風俗記』)


 こちらは明治時代に郵便報知新聞社の社員だった西滸生が洋行から帰った後に書いた西洋案内書(『実地遊覧西洋風俗記』)で、興味深かった記述や当時の社会の様子が窺える記述を取り上げた記事です。

 なお、引用箇所の一部には現代の基準だとあまり良くない表現がある場合もありますが、歴史的記述であることを尊重し一切手を加えていません。


参考文献:西滸生 『実地遊覧西洋風俗記』 1887年 兎屋支店
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明治時代の海外旅行記で面白かったところのまとめ
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●こちらはイギリス人が自国の気候を世界一と自慢することについてです。
余等ハ常に日本の氣候の寒温、中を得たる時節多く又た晴天多く最も人体に適當せる好土なるを誇り居ることながら彼地の人ハ亦た英國の世界第一の氣候たることを誇り居れり是も亦た銘々國自慢の一證なり

日本に來りし英人抔(など)の倫敦(ロンドン)を優れりとする口實(こうじつ)を聞くに曰く日本の國にハ常に濕氣(しっけ)多し其證據(しょうこ)ハ品物に黴(かび)を生じ從て腐朽すること速かなり左れバ金属なども錆を生ずること甚だ多しと此點ハ如何にも一理なきにあらず

西滸生 『実地遊覧西洋風俗記』 1887年 兎屋支店 p.131

【要約】
 イギリス人は自国の気候が世界一だと自慢していて、日本を訪れたことがあるイギリス人は日本と比べると湿気ていないのでロンドンの方が良いとお国自慢しているという内容です。

【備考】
 海外掲示板を覗いていると以下のような感じで大体イギリス人は自国の気候についてネタにしたり愚痴を言っていることが大半で、イギリスの気候を自慢するというのはまず見かけることがないためこの記述はなかなか面白いものでした。

※関連画像
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「イギリスの天候入門セット」

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「アメリカではこれは世界の終わりだけど、イギリスではただの夏」


 記述内で「國自慢」とあるように湿気の多い日本と比べてイギリスの気候を自慢したのだと思いますが、国内では愚痴を言っていても国外に対しては自慢するというのはお国自慢では割とあることだと思うので当時のイギリス人の人間味をここから感じられました。


 記述内の「世界第一」という言葉があるのも結構なポイントで、当時イギリスを訪れた日本人はイギリス人は何かと「世界一」と言うことについて触れていて、例えば1910年発刊の「英人氣質思ひ出の記」の中には次のような記述があります。
種々の説明をして呉れた一人の獄吏に向つて「尙ほ大陸諸國に行はるる監獄制度に就きても、何か参考となるべきことを御存じならば承りたい。」と云つたさうである。所がその獄吏は不快なる顔付きをして「私は他國の制度のことは一向に存ぜぬ。私は唯英國の制度が天下第一なるを知るのみ。」と答へたさうだ。この話は僕が未だ英國に行かぬ前、聞いたのであるが、今自ら英國に行て見て、如何にも有りさうなことだと思ふ。

凡そ英人ほど猥りに「天下第一」を稱する國民はあるまい。

(中略)

甚だしきに至りては「今より五十年前に於て、この地方の紡績業は天下第一だつた」などと云つて得意がつて居る。これ英人が英國のみを知て天下を知らざるの證據である。

永井柳太郎 『英人氣質思ひ出の記』 1910年 實業之日本社 pp.22-24

 こちらはイギリスの刑務所制度を自慢する刑務官に他国の刑務所制度について尋ねたところ「他国の制度は知らないけどイギリスの制度が世界一ということは知っている」と返されたという話で、著者は実際にイギリスを訪れてみるとイギリス人は何かと世界一と言うのでその話には現実味があると述べています。

 現代だと「世界一」をやたら言うのはアメリカ人で、イギリス人にはそんなイメージはあまりないという人が多いのではないでしょうか。海外掲示板を覗いていても、イギリス人がお国自慢をしていることもそれなりにはあるのですが自虐ネタを書き込んでいることの方が大半で「世界一」を主張するというイメージはあまりありません。

 尤も、だからと言って当時のアメリカ人が「世界一」を連呼していなかったということではなく、当時の旅行記を読んでいると現代と同じく「世界一」を主張しているアメリカ人の姿が多く見られます。

 例えば1910年発刊の「欧米印象記」では「例の世界一といふ事を、猫にも杓子にも附けたがる米国流」としていますし、1919年発刊の「米国旅行案内」でもアメリカ人は「口を開けば必ず世界一といふ」ことについて詳しく述べています。
(中村吉蔵 『欧米印象記』 1910年 春秋社 p.61)
(上村知清 『米国旅行案内』 1919年 新光社 p.33)


 記述内のイギリス人は日本は湿気が多いとしていますが、海外を旅行した日本人もこの点についてはよく触れていて、特にアメリカを旅行した時にはその乾燥具合に驚いたということをよく記録しています。

 例えば久米邦武による「特命全権大使米欧回覧実記」ではアメリカ合衆国東部の気候について次のように述べています。
東部は一般に空気が乾燥し、わが国の状態とは大きく異なっている。野菜なども三日間ほど室内に放置して置くと粉々になるほど乾燥してしまう。朝の身じまいに使ったタオルが午後まで湿っていたことはなかった。

久米邦武編著 『特命全権大使米欧回覧実記 1』 2008年 慶應義塾大学出版会 p.48

 これとほぼ似たようなことは1889年発刊の「周遊日記」の中でも触れられています。
米国ノ地空気乾燥シテ物品ノ貯蔵ニ東洋諸国ノ如キ癥濕ノ患ナキハ予テ聞ク所ナリシガ此夕不図、綿織ノ手巾ヲ洗ヒ窓下ニ掛ケ置キ食事ヲ畢リシトキ既に乾燥水気ナキヲ見タリ空気ニ濕気ナキ驚クニ堪ヘタリ

永山武四郎 『周遊日記 上巻』 1889年 p.31

 この文章はカタカナ交じりで少し読みにくいのですが、アメリカ合衆国の空気は乾燥していて、ハンカチを洗って干していたら食事が終わった頃には既に乾いていて驚いたという内容です。


 イギリスと日本の月別湿度を調べてみましたが、日本だと夏が湿度高めで冬は湿度低めなのに対して、イギリスは結構湿度は高めでしたが夏は低めで冬が高めなので体感的には過ごしやすいのかもしれません。

※東京の湿度
3ff8071220430c24d56b0758fa113795
ソース:https://japan.world-season.com/climate-tokyo/

※ロンドンの湿度
キャプチャ
ソース:https://weather-and-climate.com/average-monthly-Humidity-perc,London,United-Kingdom




キャプチャ


外国人「東京のコロナ感染者がまた100人を超えてしまった…」

東京都 新たに107人の感染確認 5月2日以来 新型コロナ
東京都は2日、都内で新たに107人が新型コロナウイルスに感染していることが確認されたと発表しました。都内で一日の感染の確認が100人以上となるのは、大型連休中のことし5月2日以来2か月ぶりで、5月25日に緊急事態宣言が解除されて以降最も多くなりました。107人のうち20代と30代はあわせて71人で、全体のおよそ66%を占めています。62人はこれまでに感染が確認された人の濃厚接触者で、45人は今のところ感染経路がわかっていません。(NHK)
K10012492591_2007021447_2007021505_01_02
引用:FacebookFacebook②JapanToday


(海外の反応)


1No infomation万国アノニマスさん 
木曜日の東京の新たなコロナウイルス感染者は107人となった


2No infomation万国アノニマスさん
厳しいね


3Australia 万国アノニマスさん 
どうしてこうなったんだ?

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「日本は香港の人々を受け入れてあげて!」中国批判と習氏招待のはざまに立つ政府。

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安全法成立「遺憾」 日本、中国を強くけん制も…習氏訪日へジレンマ
日本政府は30日、香港の統制を強化する香港国家安全維持法を可決した中国に対し、これまでの「深く憂慮」や先進7カ国(G7)外相声明の「重大な懸念」より踏み込んだ「遺憾」を表明した。強い態度の一方、安倍晋三首相は新型コロナウイルス感染の拡大などで延期されている習近平国家主席の国賓訪日も諦めておらず、中国を過度に刺激したくないとのジレンマも抱える。
続く↓



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